Return love only you











                                      
なんだか周りの女の子達は楽しそうで。
私はそれをなんだか温かい気持ちで見つめてしまう。
お天気もいいし。
みんな楽しそうで。
なんだか平和だなぁ。
「なぁーに、しけた顔してるのよ。蘭?」
「園子・・」
突然目の前の席に座り込み、園子は私を楽しそうに見つめる。
「ねね、なに貰ったの?旦那さんに。」
からかうように見上げてきて、園子は耳を立てた。
私は小さく笑って、その耳に囁く。
「何にも貰ってないよ。」
「・・・・」
沈黙は20秒。
園子は鳩が豆鉄砲を食らったような顔できょとんとしてる。
それがおかしくて笑ってしまうと、園子は大きな声を上げた。
「なあーに、それ!?何考えてんのよぉ、アンタの旦那は!!
本当っに、甲斐性なしねぇ!ちょっと一言文句言ってくるわ!」
そうして席を立ち上がる。
本気でこのまま新一のところへ行きそうな勢いなので、私は慌てて園子を抱きとめた。
「待って、待ってよぉ〜〜。そんなこと言っても、まだ今日は始まったばかりなんだし・・・」
「・・・・」
そんな私を見下ろして、園子はにんまりと笑う。
「そっか〜〜。やっぱり信じてるんだ、新一君のこと。」
「・・それは・・」
そうじゃなくて。
別にお返しなんかいらないの。
確かに今日はホワイトデーで。
私はバレンタインに新一にチョコと手袋をプレゼントしたけど。
別にお返しが欲しかったんじゃないの。
「で、園子の方は?今日、帰ってくるんでしょう?京極さん。」
「う、うん・・」
今度は園子が静かになってしまう。
ほんのりと頬を染めて、可愛らしく園子は言った。
「そうなのよv今日帰ってくるんだ。だから放課後は速攻で空港まで迎えに行くの。
へへ〜、時間待ち合わせてるんだv」
「良かったねぇ。京極さんは何お返ししてくれるのかな?」
「それがさ・・・」
急に園子が肩を落として、ぽつりぽつりと話始める。
「真さんって・・蘭も知ってると思うけど、ああいう人でしょう?
ホワイトデーとかちゃんと覚えてくれてるかなぁ???」
「・・・・当たり前じゃな〜い。ちゃんと覚えてるわよ〜。
バレンタインだって園子の為に帰国してくれたじゃない?
今日だって、その為に戻ってくるのに決まってるわ。」
そういう私を上目で見上げて、園子は笑った。
「ありがと。そうだよね・・本当は会いに戻ってきてくれるだけで充分なんだ。」
「うん・・・」
園子ってば可愛いなぁ。
なんだかんだいって、すごく京極さんのこと大好きで。
京極さんだって園子のこと好きに決まってるじゃない。
見ていればすぐにそんなの分かる。
園子だって私と新一のこと、見てるだけでなんてからかうけど。
こっちだって見てるだけで分かっちゃうんだけどなぁ・・・
これはからかいたくなる気持ちも分かるかもしれない。
園子ってば本当に可愛いだもの。
やがて授業開始のチャイムが響く。
「やばっ、んじゃまたね、蘭。」
「うん。」
先生が入ってきて慌てて園子は自分の席に戻った。
手を振って、私をそれを見送る。
少しだけ振り返ったついでに、新一の席を見つめた。
「・・・・」
朝、電話があった。
事件が起きてちょっと手伝ってくるって。
ちょっとってどれくらいなのかなぁ?
きっと・・学校が終わるまでには戻ってくるよね?
号令がかかる。
私はゆっくりと立ち上がった。


昼休み。
教室で女の子達は何を貰ったか、見せ合いっこしている。
男の子達はそれを見て見ぬフリ。
私と園子は二人で昼食を済ませていた。
「ねぇ・・もう昼休みなのにね。」
「事件が長引いてるんでしょう。」
「・・余裕だねぇ、蘭は。ま、学校じゃなくてもきっと新一君のことだから、
蘭の家の前で待ち伏せてるわよ〜〜。」
園子が明るくからかってくる。
分かってる。そうして元気づけようとしてくれること。
「でもさ〜。見てるとあれよねぇ、ホワイトデーとかってなんでも相場が決まってるわ。」
「?」
「だってさ。お菓子はキャンディーかクッキーでしょ?
そんでプレゼントは・・ほら、あの子達のとこ見てみて。」
指差されて、私はそっとそちらを見る。
数人の女の子達がそれぞれ貰ったものを見せ合ってる。
一番嬉しそうなのは・・・
「アレ見て分かるじゃない?まずは義理のお返し。
無難なとこでハンカチとか可愛らしいヌイグルミのキーホルダー。
ちょっと良ければ、もう少し高価なもの。そんで本命。
指輪でしょ?ネックレスやピアス。ほとんどアクセサリーよねぇ。
やっぱいつも身につけていられるものになるわ。」
本当だ。でも・・・
「でもさ、本当はそれらってなんでも同じだよね。
バースデープレゼントも、クリスマスプレゼントも、なんだってほとんど指輪とかで
済まされるもん。男は楽よねぇ、こっちはあれこれ悩んでるっていうのに。」
その通りかもしれないなぁ。
でも・・・
「なあに?その顔。蘭のことだから、大体なに考えてるのか分かるけどさ。」
呆れ笑って園子は肩を竦めて見る。
「な、なんでぇ?」
「だって、蘭てば。今思ったでしょう?」
急に胸の前で指を絡めて、園子は大袈裟に夢見るように語る。
「私だったら・・・新一がくれるものなら、なんでも嬉しいわぁ!!・・・って。」
「・・・・」
「図星でしょう?」
黙った私を園子は覗き込んでくる。
確かに・・・そう思いました。
だって。
本当にそうなんだもん・・・。
「はいはい。蘭って本当に可愛いんだから。少しね・・気持ちも分かるけどさ。」
照れているのか少しだけ顔を背けて、園子は言った。
やっぱり園子だってそう思ってるんじゃない。
私は笑って、園子を見上げた。


そうして時間は放課後になる。
なんて短くて、長かったんだろう。
きっと間に合わないって分かってたけど。
それでもどこかで、もしかしたらって思った。
もしかして早く事件が解決して、すぐに学校に戻ってきてくれるんじゃないかって。
・・・新一は前よりも少し、忙しくなった。
長い事件に巻き込まれて帰ってこなかった間も、待ってるのは辛かった。
信じてたけど、やっぱり会えないのは淋しくて。
でも、今こうして無事に帰ってきてくれても。
新一が探偵なことに変わりは無い。
きっとこれからも絶対にそれは変わらない。
変わって欲しいとも思わない。
私はそのままの新一が好き。
探偵であろうとする新一が好きだった。
もうずっと昔から・・・
だから。
待ってるのは平気。
時々期待したり、それを裏切られたりするけど。
それでも構わないの。
最後にきっと・・・
「蘭ーーー!!」
「園子?帰らなくていいの?」
「うん、すぐ行くんだけどその前にちょっと見て欲しいのぉ!」
そうして手を引っ張られて、連れて行かれたのは学校の裏門前。
そこには園子の家の車が止まっていた。
「これから空港まで送ってもらうんだけど、どっちがいいと思う!?」
「・・・園子ってば・・着替えるのね?」
驚いた。
だって車の中には園子の服が何着かきちんと用意されている。
「だって、制服なんかでいけないよぉ!
車の中で着替えようと思って持ってきてもらったんだけど、どれがいいのか迷っちゃって!」
本当に園子は大慌ての様子。
本当にこういうところ、マメなんだから。
「制服のままでも大丈夫だと思うけどな。そうだねぇ・・これなんかいいんじゃない?」
薄いブルーのワンピース。
シンプルで清潔な感じが女の子らしく見えて可愛い。
それに園子によく似合いそう。
「それかぁー。もっと派手なのにしようかなぁとも思ったんだけど、
真さんそういうの嫌がるもんね。うん、それにする!」
そうして園子は上着を放ってシャツのボタンを外しにかかる。
「お嬢様っ!車の中で着替えてくださいっ!!」
運転手の人が慌てて出てきた。
園子はあっそかぁ、あっけらかんと笑ってみせる。
「ありがとv蘭。帰ったらきっと新一君いるわよ?」
車の中に乗り込んで、園子はウインクしてみせる。
窓が空いて、園子は手を振った。
「んじゃ仲良くやってねーー。」
「園子こそ。京極さんによろしくね。」
「サンキュv」
動き出した車から離れて私は手を振った。
園子が見えなくなるまで、窓から顔を出して手を振っている。
園子、本当に嬉しそうだなぁ。
私はなんだか自分まで嬉しくなった。
でも・・・。
本当に新一、いるのかなぁ?
最近忙しそうにしてたから、もしかしてホワイトデーなんて忘れてるかもしれない。
「・・・・・私ってば。」
一人頭を振る。
お返しなんていらないって思ってたくせに。
・・そうじゃないよ。
本当にお返しなんていらないから。
それを口実に、会いに来て欲しいだけなの。
なんにもいらないから。
何が口実でも構わない。
私に会いに来て欲しいの・・・・


4時過ぎ。
家の前に着いた。
もちろん新一はいない。
階段を上り、事務所に入る。
「?」
出かけてるのかな?鍵がかかってる。
私は合鍵を取り出した。
扉の近くにかけたボードに右上がりの乱暴な文字があった。
『ちょっと出掛けて来る。夕飯は済ませてくるからな』
「・・仕事かなぁ?」
自分の部屋にいって鞄をおいて、制服を着替えた。
「・・・」
携帯を見ても、何のメッセージも残ってない。
かけてもきてない。
やっぱり事件長引いてるのかなぁ。
ベッドにころんと転がった。
そばにある目覚し時計を眺めた。
・・・園子そろそろ空港に着いてるよね。
会えたかなぁ。京極さんに。
あのワンピース、きっと園子に似合ってだろうなぁ。
ああ・・どうしよう。
なんにもすることが浮かばなかった。
お父さんも夕食は要らないって言うし・・・新一の家にでも行こうかな?
そして夕食作って待ってようかしら?
そうしようと思って、立ち上がる。
でも考えた。
もしかして、新一がホワイトデーのこと知ってたら・・・私、
催促しに行ったみたいに思われるんじゃないの?
・・そんなのやだなぁ。
それに・・・。
やっぱりやめよう。
でも・・お弁当作って置いて行くくらい良いよね?
もし遅くなって何も食べてこないで帰ってたら丁度いいし、
それにお弁当なら夜食べてたとしても、朝ご飯にもできるもんね。
そうしよう!
私は急いで台所へ行き、冷蔵庫に残ってるものでお弁当を作り出した。
なるべく新一が好きなもので、バランス取れてるものにしなくちゃ。
たっぷり1時間かけて私は作り上げた。
喜んでくれるといいんだけどな。
包んでからそれを袋にしまう。
そうして時間を確認するともう6時になりそうだった。
急いで出かけなきゃ。
部屋に行って着替えようとした時。事務所の入り口をノックする音がした。
お客さんかしら?お父さんいないのに、困ったなぁ・・・
そっと穴から覗いてみる。
「新一っ!?」
なんで・・どうして??
「蘭、いるんだろう?」
私は慌てて鍵を開けて扉を開けた。
少し肩で息を吐いて、新一がそこに立っていた。
「事件は片付いたの?今から、新一のとこに行こうかなぁって思ってたのよ?
お弁当作ったから・・・」
「これっ!」
目の前に差し出される箱。
赤いリボンが巻かれてる。
これ?
私に?
「なんだよ、そんな顔しやがって。今日は・・その、いいから、受け取れよっ!」
新一はおかしいくらい赤くなってる。
私は嘘みたいで、それを受け取るまで時間がかかった。
「ありがとう・・そうだ、中入って?お父さん出かけてるから。」
「ああ、知ってる。さっき見たからな。」
「?」
新一は上着を脱いでソファに腰掛けた。
「なんで知ってるの?」
「今日はな、米花プリンセスの中の時計屋で事件があったんだよ。」
「うん・・」
「そしたらな、ロビーでおっちゃんを見かけた。
あんなとこで一人でいるからよぉ、目立ってたんだよ。
そしたら、おめぇのお袋さんが来たからさ、ああ・・なるほどなぁって思って・・・」
「ええ!お父さん仕事じゃなかったんだ・・・」
確かにそんなこと一言も書いてなかった。
なんで黙ってたんだろう?
「それよりよ・・それ、開けてみろよ?その・・気に入るかものすげぇ自信ねぇんだ・・・」
少し気まずそうに新一は項垂れる。
「?」
「わりぃ・・本当に買いに行く暇がなくて・・悩んでるうちに今日になっちまってさ・・・
目の前にあったもんにしちまった・・」
「?」
一体なんなんだろう?
私は新一の隣りに座って、そっとリボンをほどいた。
綺麗にラッピングされてるそれを丁寧に剥がしていく。
中から現れたこのケースは・・・。
「・・新一、これ・・・」
「・・お前がどんなの好きか分かんなくて・・・店主に薦められたのにしちまったんだ・・・」
申し訳なさそうに新一は私を見つめた。
「嬉しいっ!!」
「へっ?」
私はにっこりと新一に微笑みかけた。
「これ、すっごく人気で今簡単に手に入らないんだよ?すごーい、よくあったねぇ・・・」
私はそれをケースから出してみた。
「しかも人気のベビーピンクだぁvすっごーーい!これって・・・もしかして・・・?」
「??」
新一は全く分かってないみたい。
本当にこういうのにうといんだから。
「知らないの?本当に??これね、新しいGシリーズでねぇ、ILOVEシリーズなんだよ?
ILOVEシリーズってね、特注でここに文字を入れてもらえるの。
バックライトで浮かび上がるんだ。」
「そ、そうなのか?」
「ね・・・新一、なんて入れてもらったの?」
「・・・・・・・」
気まずそうに新一は顔を逸らす。
なんでそんなに照れてるの??
「見てもいい?」
「ああ・・・」
ボタンを押してみる。
浮かび上がった文字は。
『RAN LOVE 
SHINICHI』
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互い黙り込んでしまう。
でも、でも。
嬉しい。
可愛いし、それに・・。
「しょうがねぇだろう!メッセージなんて思いつかねぇし、
いろいろ迷ってたら店主が俺とお前の名前聞いてきやがって、それにしちまったんだよ。」
新一、耳まで赤くなっちゃってる。
確かに新一がこんなの頼む姿想像できない。
それがおかしくてつい笑いそうになったけど、必死に抑えた。
「ねぇ、新一・・・」
「ああ?」
「こっち、向いて。」
「・・・」
そっと新一の手に私の手を重ねた。
そうして新一はやっとこっちを見てくれる。
私は言った。
精一杯気持ちをこめて。
「ありがとう、本当に嬉しい。」
「・・気に入ったか?」
「うんっv」
「そっか、ならいいや。」
やっと新一はいつもの笑みを浮かべてくれる。
そうして安心したように私を抱き締めてきた。
「悪かったな。最近忙しくてよ・・全然電話も出来なかった。」
「平気よ?毎日学校で会えるし・・そうじゃないときだって、こうして会えるでしょう?」
新一の腕の中にホッとする。
新一が本当に私のとこへ帰ってきてくれる瞬間。
この瞬間が好きだった。
この腕がすぐまた行っちゃうとしても、それでもまたこの一瞬の為に
いくらでも私は待っていられるよ?
不意に私は思い出した。
「ね、新一・・・このILOVEシリーズって必ずペアで売られてるけど・・・
新一、もう片方持ってるの?」
「・・・・ああ、もらった。」
「もらったの?!」
私は驚いて新一を見上げる。
「あのなぁ、これは報酬なんだよ。ギャラはもらえないって言ったら、
じゃあこれを・・・じょにっていうから・・・・」
恥ずかしそうに新一は私を抱き締めなおす。
・・・今、彼女って言った?
・・・今更なのに。
なんでそんな他愛ないことが嬉しくてしょうがないんだろう?
なんでこんなに幸せでいっぱいになっちゃうんだろう。
「新一・・本当にありがとう。すごく、嬉しい・・・」
「蘭・・・」
「ねぇ、見せて?新一の方。」
私は耳元に囁いた。
新一から離れて、それを待つ。
少し気まずそうに新一は私を見下ろした。
「?」
「・・・お、おんなじだから気にするなよ?なっ??」
「・・・・」
なんかおかしい。
なんでそんなふうに言う必要あるわけ?
「新一?」
「・・・」
「新一・・見せて?」
「・・・なよ?笑うんじゃねぇぞ!?」
「?」
新一がそれをポケットから出して、ふてくされて向こうを向いてしまう。
背中が丸くなってしまってた。
なんでそんなに見せたくないんだろう?
ケースを開けてみる。
やっぱり男性用だな。
少しサイズが大きい。
でもデザインはどこも一緒だった。
それにブルーがすごくキレイ。
やっぱりブルーもいいなぁ。
そうしてバックライトを押してみる。
「・・・・・・・」
今度は笑いを堪えなかった。
「ああ!笑いやがったなぁ!!」
私の手の中からそれを奪って、新一は向こうを向いてしまう。
私は笑いながら、その背中に抱きついた。
「だって・・・だって・・・」
「ちきしょう・・あの店主め・・勝手にこんな文字入れやがって・・
今度事件があったときは絶対関与しないぞ!」
私は何もいえなかった。
だって、すごくおかしくて。
新一がこれを初めて見た時の顔を思い浮かべる。
「あのなぁ!そんなに笑うんじゃねぇよっ!!
・・替えさせようかと思ったんだけど、もうこれしか残ってねぇって・・・」
そりゃそうだよ。
これ売れたと同時に売れきれたってくらい人気高いんだから。
それにいちいちお店で対応して文字入れしなきゃいけないから、大量生産されてないし・・・。
でも。
やっぱり可笑しい。
「ね、新一。これ明日から着けようね??」
「・・俺も!?」
今度は新一が驚いて、私を映す。
私はにっこり頷いた。
「だって、せっかっくペアなんだもん。一緒につけなきゃ意味ないじゃない?」
「・・・・・」
暫く黙ったまま、新一は私の肩を抱き寄せた。
そうして髪を弄りながらなにか考えてるようだった。
「分かったよ。ちゃんと着けてく。おめぇも忘れんじゃねぇぞ?」
「うん。」
「ずっとだぞ?いつも身に着けてろよな?俺も、絶対にはずさねぇから・・・・」
「うん。」
嬉しい。
嬉しい。
少し恥ずかしいけど、そんなに皆にバレナイだろうし。
同じの着けてられるなんて、まるで・・・
「そう考えるとこれでも良かったな。本当は・・指輪とかにしようかとも考えたけど、
指輪じゃ学校とかおっちゃんの前でしてられねぇからな。」
「・・・・・」
そんなこと考えてたの?
新一が??
なんだか嘘みたい。
でもそんな言葉さえ、私には最高の贈り物で。
ぎゅっと目を閉じて、新一の胸に頬を寄せた。

指輪もネックレスも。
なんにもいらないけど。
欲しくないって言ったら嘘になる。
でもこれが、一番嬉しい。
いつでもどこでもつけていられるし。
誰に咎められることもきっとないもん。
そして一緒の時間を刻んでくれる。
新一と。
どこにいても。
離れてても。
同じ時を刻んでくれるでしょう?
それでも・・・
やっぱり笑みが零れてきた。
「いつまでも笑ってんじゃねぇよ・・」
ふてくされた声が降ってくる。
だって・・・。

新一が暗い場所で時間を確認する時。
そのバックライトに浮かぶ文字。
思い浮かべるとやっぱり可笑しい。
でも・・・ずっと忘れないよね?
どんなとこ行っちゃっても。
例え真っ暗な中にいても。
それ見たら思い出して。
私、いつでも待ってるから。
新一の帰りをずっと信じて、待ってるから。
だから、今は許して。
笑っちゃうほど、嬉しい言葉を。



『RAN 
ONLY LOVE』



HAPPY END 2001年3月14日

Written by きらり

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