あいたくて あいたくて あえなくて……














≫≫7月7日、晴れ













どこまでもカラリと。
まるで切り取った一枚の絵葉書が。
どこまでも続く青天の青空。
水色の絵の具を薄めた水を、空に零したみたいな。
白い雲はキレイにアクセントを効かせて。






「あっちぃ〜」
「………」
「あちーからもう家入ろうぜ?寄ってくんだろ……蘭?」





吸い込まれてしまったように。
空を仰いだままの蘭に新一はもう一度声かけた。
7月上旬にしては真夏日和だ。
ジッとしてるだけでジワッと汗が滲んでくる。
額のそれをポケットに突っ込んでおいたハンカチで拭き取り。
暑くねぇのかと見れば、蘭も同じように額に汗を光らせていた。
長い髪が時々吹く風に揺れる。
首筋にも銀光を放つ汗が浮かんでいて。
なんだか触りたくなる……そんな衝動を頭の中で払って。




「蘭、あちぃから家入ろう。
んな太陽ばっか見てると立ちくらみ起こすぞ?」
「…うん……ねぇ、新一・・」
「うん?」
「今日は晴れ、だね。」
「あぁ?晴れだろ?」
「…逢えるね。」
「ハッ?」




分かってない新一の声に。
思った通りだと蘭は嬉しそうに笑う。
そうして空から顔を新一へ戻すと、そのまんまキレイな笑みに少しだけ焦った姿に
ますます笑みを零した。




「な、なんだよ?」
「………」




ジッと見詰められてバツが悪そうに。
さっき掠めた良からぬ衝動に気付かれるのではないかと後ろめたさに。
新一は乱暴に頭を掻いてそれを誤魔化す。
そんな仕種一つ残らず、全部見詰めて。
蘭は嬉しそうに、もう一度云った。





「逢えたね。」
「…へっ?」





いつも知る、見るそのキレイな笑顔。
その上に広がる水色の空。
夏が来ていると主張する大きな白い雲達が。
今夜の星空を予感させていた。









今夜 かなえたい願いは  たった一つ








伸ばした手が届かなかったあの夜から








かなえたい願いは   たった一つ













◆2004/07/08


Written by きらり

サイト1周年記念に頂きました。
きらりさん、ありがとうございましたvvv



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