白い虹






「ね、青子・・って本当?
ねぇ、聞いてるの?青子、青子ってば!!」
「きゃん!」
耳元でいきなり恵子が大きな声を出す。
青子はびっくりして目を丸くした。
な、なんなのぉ〜〜!?
「どうしたの?恵子、美野里?」
「どうーしたの?じゃないわよっ!
全く春だからってぼーっとしてぇ。」
恵子はぷんぷんと怒って、腕を組み返す。
え?呼ばれてたの?青子・・・
すっかり違うこと考えてたから、聞いてなかったよぉ。
美野里はにやりと笑って、そんな恵子を宥めた。
「まあまあ、青子はねぇ今幸せモードでそれどころじゃないのよ。
ねぇ?青子?」
幸せモード?
そりゃ今日はお天気もいいし、お腹もいっぱいだし、気分はいいけど?
「あ、そっかぁ。とうとう快斗君と恋人同士になったんだもんね。」
・・・・・え?
「ええええぇぇっ!!??」
二人はにやにやして、青子を見つめる。
「隠したって無駄だぞ〜。もうすごい噂なんだから。
快斗君と二人ですっごい良いムードで映画観たでしょう?
その前に本屋で待ち合わせしてたし。
クラスの奴等だけでなく、他のクラスの子も見てたらしいわよ。」
「そうそう、水臭いよ〜〜。絶対最初にあたし達に話してくれると思ったのに!」
美野里は少し拗ねて、唇を尖らせる。
その隣りで恵子もうんうんと、頷いて見せた。
「そうだよ!二人とも前からそういうふうだって分かってたけどさ、
なんで言ってくれないかなぁ?もう学校中噂になっちゃってるよ?」
「ち、違うよぉ〜〜!」
青子は慌てて首を振った。
思いっきり振っても二人はにこにこして、分かってくれない。
でも・・どうしよ〜〜。
見られてたんだ。え、映画館でも・・??
思い出して青子のほっぺたは真っ赤になる。
二人はやっぱりと笑いあって、手を叩く。
「おめでとう、青子ぉ!
一番最初に彼氏が出来ちゃうなんてさ、悔しいけど・・・でも良かったね!」
まるで自分のことのように喜んでくれる二人。
どう説明したら良いんだろう?
あれは快斗じゃなくてKIDなんだよ。
でも・・・そんなこと親友の二人にだって言えないよ。
けどこのままだったら、快斗まで誤解されたままになっちゃうし・・・
ああ〜〜ん、どうしたらいいんだろう??
でも・・やっぱり快斗に悪いもんね・・・。
やっぱりちゃんと言わなくちゃ。
意を決して、青子は顔を上げる。
にこにこ、嬉しそうに笑う二人。
青子の幸せを疑わずに喜んでくれてる。
二人に・・言えたらいいのに。
青子の誰よりも好きな人。
青子の大事な恋人は・・・怪盗KIDなんだってば。
「あ、あのね、二人とも聞いて!」
「?」
二人は青子のいつになく真剣な眼差しに不思議そうに首を傾げてる。
次の言葉を頭の中で探しながら、口を開いた時だった。
「あーおこっ!」
「へ?」
上からなんか落ちてきた。
青い薔薇?
ここは屋上だし、これ以上上があるわけないのに・・・
見上げてみる。
そこは屋上の入口がある少し高くなった塀の上。
ひらひらと手を振ってるのは・・・
「快斗ぉ??」
「よっ、遅れてごめん!」
そう言って青子の前に飛び降りてくる。
くるりと一回転して、上手に着地した。
なんで、快斗が?
「隠してるつもりはなかったんだ、なあ青子?」
そう言って肩に手をのっける。
な、なんなの??
「でさぁ、俺達これからちょっと大事な話があるんだけど、
二人とも・・ちょっと青子借りてもいいかなぁ?」
「もちろんよ!」
「うちらお邪魔だよね。んじゃ退散するから、青子またねぇ!」
二人はお弁当箱を手際よく片付けて、そうして屋上を出て行こうとする。
「あ、待って・・・あのね・・」
「しっ、青子。」
人差し指が青子の唇をちょこんと押さえた。
「?」
「そーだっ!快斗君!!」
くるりと恵子が振り返った。
軽く睨みつけて、快斗に宣言する。
「青子のこと、大事にしなさいよねっ!
泣かせたりしたら承知しないわよっ!!
分かった!?」
恵子・・・。
青子は何も言えなくなってしまった。
「ああ、任せてくれよ!泣かせたりしません。神に誓って。」
快斗は笑いながら、片手をインディアンみたいに上げて、はっきり言う。
一体どういうつもり?
二人は満足そうに笑って、屋上の扉を開けて出て行った。
そうして残るのは。
青子と快斗だけ。
「・・・知らなかった・・・そんな噂になってるなんて・・。」
「しょうがねぇよなぁ。天下のキッド様は俺様とそっくりなんだからよ。」
快斗がにかっと笑いかける。
ああ、慰めてくれてるのかな?
元気がなくなっちゃったこと、もしかして気付いてる?
「違うもん・・快斗がキッドに似てるんだもん・・。」
「そう、だな。」
青子は思わず快斗の手を払いフェンスに寄った。
そうして校庭を見下ろす。
「でも・・あんなこと言って・・どういうつもりなの?」
いつの間にか、快斗は青子のすぐ傍にいた。
ポリポリと頭を掻いて、そうして隣りに立つ。
「いいじゃん、そう思わせときゃ。」
「?」
「そうすりゃさ、青子だって人目を気にせずにキッドとデートできるだろ?
キッドだって、俺に変装してりゃ誰にも分からねぇんじゃん?
いつも人目隠れて逢うの、大変なんだろ?」
「快斗・・・」
びっくりした。
快斗がそんなふうに考えてくれるなんて、思ってもなかった。
そりゃ隠れて逢うのは大変だし、青子は正直KIDと一緒にいろいろ出かけたい。
でも・・・変装してまで、無理してまでそうして欲しくなかったの・・・。
「でも、快斗困るでしょう?学校でそんな風に噂されてたら、その・・
彼女とか、作れないじゃない・・・」
「そんな心配すんなよっ!大丈夫だって!俺、今好きな奴いねぇし。
それに・・」
「?」
そういえば快斗から好きな女の子の話、聞いたことないな。
ん?
快斗の視線に気がついた。
どうしたんだろう?
なんでそんな顔してるの?お腹でも痛いのかな?
「それに?」
「いいや、なんでもねぇよ。青子は余計な心配すんじゃねぇよ。」
「うん・・でも・・・あっ、じゃあ、快斗。」
「ん?」
青子は快斗の手をしっかりと握り締めた。
快斗は驚いたふうに青子を見下ろしてくる。
「もし、彼女が出来たらその時は青子に一番に教えてね!
そしたらみんなの誤解をちゃんと解くから・・・ね・・?」
「・・・・ああ。」
あれ?・・・快斗少し、背伸びたのかな?
なんだか見上げるのが、遠くなった?
それにこの感覚。
前にもどこかで・・・
「黒羽くん。」
「きゃっ!」
いきなり後ろから声がして、青子は飛び上がってしまった。
握っていた手をバッと離して、後ろに隠しちゃう。
そんな必要ないのに、どこか後ろめたくて・・・。
「あ、紅子ちゃん・・・びっくりした・・」
そこに立ってたのは同じクラスの紅子ちゃんだ。
びっくりしちゃった。全然気付かなかったんだもん。
「ごめんなさいね、驚かせてしまって。
人のこと呼び出しておいて、他の女の子と仲良さそうにしてるから
つい話しかけたけど、貴女だったの?」
綺麗に微笑んで紅子ちゃんが歩み寄ってきた。
「?」
快斗は青子の前に立つ。
二人とも、待ち合わせてたんだ・・もしかして、青子お邪魔なんじゃ?
「約束の時間より5分も早ぇじゃねぇか。珍しいな?」
「ふふ、良い女はそうあるべきでしょう?」
「よく言うよ?」
なんだか快斗の雰囲気が違う。
なんだろう?二人とももっと深い意味を持って話してるみたい。
「あ、青子、もう行くね!さっきはありがとう、快斗。
紅子ちゃん、びっくりしちゃってごめんね。」
「あ、青子・・・」
快斗が何か言いかけてやめる。
青子は急いでバックを持って、屋上を出た。
扉を閉めて、呼吸を整える。
「はぁー、びっくりした。」
それにしても・・紅子ちゃんと快斗、何してるんだろう?
二人ともそんなに仲良かったっけ?
なんだか気になる・・・。
でも、青子が詮索するのもなんか変だもんね。
「・・・・でも・・」
なんだったんだろう?
さっきの感覚。
なんか、大事なこと思い出せそうだったのに・・・・。
「ま、いっかぁ。」
青子は階段を降りはじめた。
教室に戻ったら恵子たちにいろいろ言われそうだなぁ。
墓穴掘らないように、気をつけなくっちゃ。
せっかく快斗が話合わせてくれたんだもん。
ありがとね、快斗v
そして・・・本当にこれからKIDと普通にデートできるかな?
今度逢ったら話してみよう。
賛成してくれると良いんだけど・・・・。
そうしたら。
この夏は二人でいろんなとこ遊びに行きたいな♪
プールに行って、海も行って。
それに水族館とかもいいなぁ、涼しげで。
「・・・・・」
去年は快斗と行ったんだっけ。
暑いとかなんとか文句言いながら、ちゃんと付き合ってくれたんだよね。
快斗は優しい。
昔から、口はすごく悪くなったけど。
それでも優しいんだよね♪
知らず鼻歌が出る。
青子は今、すっごくご機嫌だった。


「何怒ってるのよ?いいところでお邪魔したからかしら?」
「怒ってねぇよ。」
紅子はくすくすと笑みを零す。
そうして扉に向かうと、ふわりとジャンプした。
「良いお天気ね。」
「彗なくても飛べんのかよ?」
快斗も同じ場所にジャンプする。
「これくらい彗がなくたって、飛べるわよ。」
「へいへい、そりゃすごいですな。」
どうでも良くて俺はそれを聞き流した。
「彼女はまだ夢に囚われたままなのね・・・それは、あなたもかしら?」
「どうかね・・・俺はともかく、青子はあのままさ。」
紅い魔女は笑う。
その漆黒を宿した瞳で俺を覗き込んだ。
「あなたはいつもそう。私の予言を聞いた試しがないわ。」
「・・・・予言はただそれだけにすぎねぇだろ。
例えどんな予言があったって、俺はチャンスを逃すわけにはいかねぇんだ。
ブルーエンジェル・・・あれだってあの時やらなかったら
ニューイヤーフェスティバルの為にイギリスに持っていかれてた。
海外まではさすがの俺も手が出せねぇからな・・・」
「だから、言ってるじゃない?
あなたが私の下僕になると誓うなら、海外でもどこでも。
世界中の全てにあなたを連れてってあげる。
そうして探し出してあげる。
あなたのパンドラを・・・」
俺はキツク紅子を睨みつける。
そんな気が全くねぇことは、こいつだって知ってるはずだ。
つまらなそうに紅子は視線を外す。
そうして制服の襟に手を入れた。
取り出したのは・・・
青い輝き。
その透明なまでの危うさの光は・・・
「おめぇ、身につけてんのかよ?」
「あら、あなたがくれたんじゃない?」
やってねぇよ。
調べてもらいたかっただけだ。
呪いとかそっち方面はお前の方が専門だからな。
「それにね・・・この宝石の中に呪いはないわ。
今は、ただの空っぽのサファイアに戻ってるわよ?」
「・・・?」
光に翳して、その反射を紅子は楽しむ。
うっとりとそれに口付けて、そうして俺を見た。
「知りたい?
この呪いは発動したらその持ち主を絶望の孤独の淵まで陥れるまで、
終わらないのよ。」
「・・・・・な、に?」
どういうことだ?
あれで終わりじゃねぇのか?
だとしたら・・・?
「そう。彼女は運が良い事に記憶を無くしちゃったでしょう?
だから、呪いの力も止まってるのよ。
呪いは呪う相手がその発動をした時の状態でなければ、発動できない。
あのこは今このブルーエンジェルを見たことも、触れたことも忘れてしまってる。
きっかけすら忘れてしまってる彼女に、呪いは無意味なのよ。」
「だとしたら、まさか・・・・」
一番考えたくないことだ。
それでもそれしか思いつかない。
そうだとしたら・・・・
「あなたのそういう察しの良い所、気に入ってるわ。
そうよ。」
「・・・・・」
絶望が俺を抱く。
忘れてかけていたそれが微笑んで俺を見つめる。
俺は許されない。
俺は・・・
「彼女が記憶を取り戻した途端、この呪いは再び彼女に襲い掛かる。
絶望と孤独を与えるために。
その機会をずっと伺っているのよ・・・」
「ふざけんなっ!!あれで・・・あれで足りないっていうのかよ?
あれ以上なにがあるっていうんだよっ?!
あんな・・あんな・・・・」
冷静で静かな紅子の声。
それが遠くで、ゆっくり響く。
「それはあなただけの苦しみ。あなただけの絶望よ。
彼女は何も傷ついていない。
忘れてしまったんだもの。
あなたが恋人だったことも、そうしてずっと憎んできた怪盗・・」
「言うなっ!!」
感情のままに怒鳴りつけていた。
俺の中の俺が、悲鳴をあげる。
知っていた。
これは俺の罪。
俺が巻き込んだ結果。
お前の傍を離れた、お前を守れなかった俺の罪。
予感を無視して、予言を忘れて。
お前の言葉さえ置き去りにした、俺への罰。
俺の、俺だけのそれじゃ足りないっていうのかよ?
これ以上青子をどうするつもりなんだよっ!?
「黒羽君・・・冷静になりなさいよ。
どうしたってこの呪いは解けないわ。
私も少し・・・どうにかしてみようとしたけれど・・・
悪かったわね、私の手に負える物じゃないわ。
年代の重みが強すぎる・・・」
「・・・・すまねぇ・・。大丈夫だ・・・」
静かな瞳が俺を見つめる。
さらさらと風になびくそれを見つめて。
俺は青子を想っていた。
深い瞳。
あの悲しみの瞳。
俺を拒んだ、俺を睨みつけた綺麗な瞳。
風に攫われるように、闇に抱かれたお前。
俺はまだ、何一つ救えていない。
何一つ、償えていない。
そうだ、俺は何一つ。
青子にしてやれてないのだ。
「思い出さない限り、それはあのこに降りかからないわ。
もしかしたら、それまでにどうにか出来るかもしれない・・・
私も、出来る限りのことはしてみるわ。」
「ああ、サンキュ!俺も・・・あいつを守る。
傍にいる。そうすることしか今はできねぇ・・・・でもな。」
俺は遠くを見た。
昼休みを終えるチャイムが鳴り響く。
「本当は・・・どっちがいいのか分からねぇ・・・。
忘れたままで、そのままでいいんじゃねぇか?
その方がアイツにとって幸せなんじゃねぇか・・・?」
「・・・・・」
瞳を伏せる。
こんなに近くにいても。
あなたの心はいつだって彼女のことしかないのね。
知っていたけど、思い知らされる。
それがおもしろくない。
けれど・・・・。
こうしてあなたの苦しみを誰よりも傍で見ていられること。
それを嬉しく思うなんて、あなたに知られたら怒られるわね。
・・・あなたはいつだって女心を分かってないわ。
歯の浮く台詞も届かない、そんな心の奥底に秘めた女の想いを
いつの時代も男は気付かないまま。
だからなのかもしれないわ。
この呪いが女にだけ発動するのは・・・。
男には、こんな胸の内、理解できないでしょうからね・・・。
女も同じ。
秘めるだけで、伝えられない。
だからこそ、この呪いは強いのかもしれない・・・。
そうして私にも解く術はないのかもしれないわ・・・。
それでも、あのこのあの笑顔を見たいと思う。
忘れてしまった今じゃなく。
その強さを秘めた笑顔を、もう一度・・・。
「私も、ヤキが回ったわね・・・」
「?」
「それじゃあね。何か分かったら、お知らせするわ。」
ふわりとそこから飛び降りる。
ちらりと上を見上げて、そうして扉を開けて溜め息を漏らした。
あの男は、私を見もしないんだもの・・・。
だからこそ思い知らせたくなる。
私の力を。
この渦巻く感情を。
見せ付けて、ひれ伏せてやりたい。
「・・・なんてね。」
紅子はゆっくりと階段を下りて歩いた。
今日はこのまま帰ろうかしら?
そうして少し、眠りたいわ・・・。
紅い魔女は欠伸をした。昨夜、少し頑張り過ぎたかもしれない。
手ごわい呪いの、ブルーエンジェルの相手を・・・。



「・・・青子・・・」
一人残った俺はその名を呼んだ。
この手に残った手の温もりを感じる。
守りたい。
守りたいんだ、お前を。
何をお前は望んでる?
今のまま、このままでいいのか?
このままがいいんだよな?
無理に記憶を戻す必要はないことを知ってる。
それでも思い出して欲しいだなんて。
俺の我儘だ。
そして償いたいなんて・・・。
どうすればいい?
どうしたら許してくれる?
快斗でも。
KIDでも。
お前が好きなんだ。
守りたいんだよ。
気持ちは同じなのに・・・・。
それなのに、快斗もKIDも。
いつかきっとお前を傷つける。
お前を・・・・。
空を仰ぐ。
真っ青な空。
すこやかなあいつの笑顔が浮かんだ。
お前は笑うんだな。
きっとえらそうに俺を見下ろして。
『なんて、らしくない顔してんのよ?』
そう言ってくれるだろう?
俺に?
KIDに?
全てを話しても?
それでも・・・・?




「・・・・」
もう5時間目が始まってる。
それなのに快斗は戻ってこない。
紅子ちゃんの姿もない。
それに紅子ちゃんはカバンもなかった。
早退しちゃったのかな?
なんでだろ?
二人が仲良くしてるなんて知らなかったから?
だから、こんなに気になるのかな?
快斗と紅子ちゃん。
時々快斗がからかって、怒らしてたっけ。
いつの間に仲良くなってたんだろう?
今度三人で遊びたいな♪
・・・それとも、青子はお邪魔なのかなぁ??
快斗には彼女が出来たら一番に教えてねって言ったから、
もしそうだったら教えてくれるよね?
ツンツン。
「?」
背中をそっとつつかれる。
後ろの席の子がそっと椅子になにかを挟んだ。
先生に気付かれないように、それをとって開いてみる。
可愛らしく折りたたまれたそれは、恵子からだ。
『さっきは何話してたの?もしかして今日は一緒に帰れないのかな?
デートだったら遠慮なく教えること。わかった?』
くす。青子は思わず笑ってしまった。
そうして返事を書いて、回してもらう。
『大丈夫v一緒に帰れるよ。
もしもダメな時はお昼休みに言うからね☆』
そう書いておいた。
快斗と恋人同士か。
冗談でもKIDは怒るかしら?
多分怒らないだろうなぁ。
KIDは優しいもん。
快斗と同じで。
「・・・・・」
そう考えると、本当に二人は似てる。
顔はもちろん・・・青子だってもしも両方並んでしまったら。
一瞬では見分けがつかないかもしれない。
それでも、きっと分かると思うけどね。
だって。
KIDはKIDだし。
快斗は快斗だもん。
どっちも青子にとって、大事な人。
見間違うわけないじゃない。
そんなふうに二人並んでみたらおもしろうだろうな。
快斗もKIDの格好して・・・。
「・・・・」
そうしたら・・本当に見分けがつくかしら?
少しだけ考えた。
他人の空似、だよね?
そうだったよね・・・?
なにか変な感じ・・・なんなんだろう。
気分を変えて、黒板をしっかり見つめる。
そうして少しだけ視線を外した。
青い空。
どこまでも澄んだその色に、霞みのように薄い雲。
白い、白い雲。
流れるような曲線で。
それはまるで空にかかった虹みたいだった。
白だけの。
青い空にかかる。
白い虹。


いつか、KIDに快斗を紹介したいな。
青子の幼なじみなんだって。
快斗にも。
青子の大事な人を紹介したい。
二人とも。
その顔を見たら、どんな顔するのかな?
考えると、少し可笑しくて。
青子は笑ってしまった。







END OR・・・?



2001/04/19
BGM
Cliched Singles Best
(L’Arc-en-Ciel)







Written by きらり

(C)2004: Kirari all rights reserved.
+転載禁止+